2009年10月24日土曜日

「法律学の学士力」について考える


 私立大学情報教育協会から「法律学の学士力」に関する試案が届き、意見を聞かれた。法律学教育FD/IT活用研究委員会によれば、「法律学の学士力」とは、下記が到達目標になる。

1.法に関する基本的知識として、法の全体像を把握し、主要な実定法のルールおよび概念について、その意味を理解し、具体例および定義で説明できる。

2.法的問題を解決する能力として、事例問題の事実の概要を客観的に把握し、解決の根拠となる法ルールを発見し、それを適用して,妥当な法的解決を見いだし,その理由を説明できる。

3.広い視野から,法の基礎を構成する原理を参照して,法の分析を試みることができる。

4.法的知識を活用して、市民として,そして職業人として紛争の予防および生活や社会の発展のためのプランを立案することができる。

 昨年秋に送られてきた案は、今回よりすっきりしていて、法学士というためには、「1. 実定法に関する基礎的知識、2. 事例問題を法的に解決する能力、3. 法を批判的に分析・評価する能力」を備えなければならない、となっていました。その時も、基準に従って検討しましたが、今回は、新しい基準に従って評価してみました。

 まず、講義ですが、1.「法に関する基礎知識」を話していますし、学生が聞き落とさないようにレジュメも配布しています。また、民法の講義では、3.「広い視野からの法分析」」を考慮して、必要に応じて商法や民訴、外国法、法制史、などにも触れていますし、4.「市民や職業人として紛争の予防」ができるように事例を示し、予防を意識して話しています。ゼミでは、2.を意識して、参考判例を示し、原典を読ませて事実を確認させ、適用すべき法文を発見させ、その解釈の是非を検討させて、妥当な法的解決を導けるよう指導しています。この結果、同様あるいは類似の事案にたいして、4.どうすれば「紛争を引き起こさないで済むのか」も考えさせています。したがって、総論としては基準に合っているといえますが、参加者の意欲を引き出す方法については、なお試行錯誤を続ける必要があるかな、と感じました。