2009年9月11日金曜日

学生野球憲章の改正第一次案を読む

 来年から、学生野球憲章が変わる。憲章の改正第一次案が公表された。スポーツを看板にしている大学や高校は多いが、憲章の理念と矛盾するような実態があるため、これにタガをはめようとする狙いがみえる。9月7日に東京第二弁護士会の法政策研究会と学会の契約法研究会が合同で研究会を開催することになり、さとっちもこれに参加した。

 学生野球は、学校教育の中に位置づけられ、スカウトした学生を学校の宣伝の道具とみて、授業を受けさせず、練習にあてさせることは、入学させた学生の高校教育や大学教育を受ける権利を違法に侵害する(10条)とされた。また、負傷して野球をやれなくなった学生に退学を強いることは許されず、学力がないのに特例として卒業させることも、高校や大学の教育をしないまま社会に送り出すことになり、好ましいことではない。教育を受ける意思がないものを学生として受け入れて、授業に出ないまま野球をやらせておくことも許されない。試合に出す選手は、教育課程を修了できるレベルの者から選び、卒業の見込みが立たないような者を選手に登用してはならない(13条)とされる。これまで、野球ができれば、勉強は問わないという風潮が、日本では強かったように思われるが、来年からこれがダメになる。

 野球ができるから奨学金を与えることも禁止される(23条)。一般にも開放された奨学制度の中で、該当者がたまたま野球をやっていたということでなければならない。また、「野球部の部員だから生活支援を与えること」も禁止される。寮費がただ、食費がただ、ということが、他の一般学生に対してもそうでなければ、野球をやっているから与えられた利益になるから禁止される。スポーツ用品の会社が、ある選手が将来有望だと用具を無料で提供することも行われてきたが、これは商業的利用とみられるから禁止される(18条)。

 野球を「学校の売り」にするにはいい指導者に来てもらわなければならない。このためには、破格の給与を出すことが行われてきたが、「教職員の給与に準じた社会相当性の範囲内」でなければならなくなる。また、指導者が、部員とプロ団体の間を取りもって、金品・経済的利益を受けることも禁止される(24条)。

 部員の不祥事について部として制裁を受けることは、他人の罪を周囲が被る連座といえるからこれをやめ、部員の不祥事が個人の非行に留まり、部に責任を問うべきものでない(=憲章の基本原理に反しない)場合には、部に対する制裁はなくなる(29条)。


 そのほか8章には救済手続きなども定められている。憲章といいながら、抽象度の高い原則規定を置くのではなく、教育における野球部のあり方を再考し、詳細な規定により、加盟団体や学校を縛り、正義(=理想)の実現を図ろうとしている。「さとっち」は、大要は賛成、細かな点に異論あり、といった立場だ。憲章は、野球に限られているが、他の学生スポーツも本来そうあるべきだろう。

2009年9月5日土曜日

「高齢者の権利の実現と擁護」を聞く

 9月5日(土)13時から、瑞穂市総合センターで開催された「朝日大学公開講座2009 in 瑞穂」へ行ってきました。総合センターは、岐阜のアパートから20分くらいのところにある。今回のテーマは、「高齢者に関する法律」で、第一講は、愛知弁護士会の大塚先生の「高齢社会を生きるための法律知識」、第二講が岐阜弁護士会の畑先生の「高齢者の権利実現と擁護のために」であり、そのあと岐阜弁護士会の山田・太田・西本先生がパネラーになった「パネルディスカッション」が行われた。新型インフルエンザの予防のため、会場関係者はマスクを着用。受付近くに消毒薬が置かれ、入場者もマスクをした人が散見された。

 当日は、岐阜は晴天。大塚先生は「歌う弁護士」として有名。ドレス姿で登壇。まず、臨終から葬儀終了までの流れと各段階における心構えを述べられた。次いで、高齢者における離婚と財産分与(住宅ローンが残っている建物、退職金、年金分割など)、病気への対策(家庭医を持つこと、任意後見契約の締結)、最後に、「親愛なる子供たちへの手紙」を紹介された。この手紙は、ぼけた親が子供に心情を伝える文面だ。子供が母親に何度も好きな絵本を読んでもらうたびに親が感じた幸福感を、ぼけた親に繰り返し答えるときに子供が感じてほしい、風呂に入りたがらない子供を追いかけて風呂に入れた親の気持ちを同じ状況にある親に対して感じてほしい、といった内容だ。予定された内容は時間内で解説しきれなかったが、この手紙で、聴者の心をつかんだように感じた。

 畑先生は、岐阜県の65歳以上の高齢者が人口の22.9パーセントで、全国平均の22.1パーセントを上回っており、振り込め詐欺の被害が、全国4番目か5番目であるといい、手口を紹介され、対策として、合言葉を考えておくことが有効だといわれた。また、ぼけた高齢者は悪徳業者のカモになるが、子が老親と別居している場合は、被害が明らかになるのが遅れて救済が難しくなることが多いから、周囲の人が見守るような活動を展開することが有効だと指摘した。さらに、7年以上過払い利息を払っている場合は、お金が返ってくる可能性が高いから弁護士会や消費者センターに相談してほしい、と言われた。高齢者に対する虐待を防止するためには、地域包括支援センターの活用や成年後見制度(特に任意後見制度)を活用してほしいとも言われた。ポイントを押さえて、時間内に上手にまとめられたが、流した部分に多くの問題が含まれている。それを聴き手に感じさせないように流したところに話のうまさを感じた。